タバコが好きというのはウソである。
あなたがもし喫煙者だったとして、タバコ好きですか?
こう質問しますと、タバコを吸ってる人の大半は「好きだよ」と言うのです。
ねぇ、それホント?
って僕は問いかける。
っていうのはね、実は昔、僕もタバコを吸っていて「好きなんだから吸わせろよ」と思ってたクチだからです。
これねぇ、「ウソ」なんですよ。「ウソ」。
それもやっかいな事に、自分に対してついているウソなんですね。
この手のウソの事を「自己欺瞞」と言います。
人間は、この「自己欺瞞」っていうのを、それはもう、山のように抱えて生きてます。ウソだらけで何が本当なのかわからなくなっちゃってるってくらいにたくさん自分にウソをついてます。
で、タバコに関しては、ものすごく簡単です。これは純粋に「薬物中毒」なんですね。それ以上でもそれ以下でもない。単にそれだけ。
でも、自分が中毒患者であるという事実だけは、認めたくないわけです。プライドがあるから。
なので、「私は中毒じゃない。好きで吸ってるんだ。」と自分をだますわけです。本当は好きでも何でもないんだけど。たまたま吸ってみて、中毒になってしまっただけです。
たいていのタバコ吸いは、人生最初の一服は「全然おいしくなんかないじゃん。なんだこれ」って思うんですよ。
で、その感想こそが、もっとも真実なのであります。
だがしかし!
困った事にタバコ中毒の人間はみんなタバコを「おいしい」って言うのよな。そこで何も知らない喫煙ビギナーは、「これのどこがおいしいのだろう?」と思って、また吸うということをしてしまう。
で、知らず知らすのうちに中毒者になって、禁断症状が出てきて、そこで禁断症状がタバコを吸うことで解消されるのを知って「ああ、タバコのおいしさって、これのことだったんだ!」と思うと。そういう仕組みなわけです。
なので、タバコが「好き」とか「おいしい」っていうのは、もう完全にウソなわけです。単に「禁断症状の解消」だけです。それを喫煙者は「おいしい」とか「好き」とか言ってるだけです。
しかし。
問題なのは、この「好き」「おいしい」というウソの言葉の存在なんですね。禁煙が難しいのは、実はニコチンの魔力が強いからではなくてタバコを「おいしい」とか「好き」とか思っている自己欺瞞、あるいは自己規定を更改するのを忘れてしまうからなのです。
いくらタバコをやめても、この「タバコはおいしい」「私はタバコが好きなんだ」という思い込みを持っている限りは、やめることができないわけです。
いくら物理的な化学物質による禁断症状が消え去っても、心の中に「おいしい」という考え方が残っていたら、これはどこかでまた喫煙の習慣が復活してしまうのです。
だから、禁煙というのは、禁煙ガムとかニコチンシールとか、そういう道具に頼っても、あんまり意味はないんだと僕は思ってます。これは純粋に「認識」の問題なんだよなぁ。
つまり「自己欺瞞をあばく」という事をやらないとだめだ、ってことなんです。
●私はタバコが好きだ。
○ウソ言え、単なる薬物中毒じゃねーか。
こういう心の中の対話こそが必要なのですね。
これをやらない限り、タバコを完全にやめることはできないわけです。
でも、恐ろしい事に、みんなタバコは化学物質による薬物中毒だからやめられないと思っているんですね。
いやー、確かにそうなんだけど、中毒性そのものはすごく低いんだよって話でして。ニコチンの体内残留期間は二週間だってことですから、二週間我慢できれば、それでオーケーなわけで。
それよりやっぱり「タバコはおいしい」という自己欺瞞の方がパワーとしてはウワテなわけですよ。
ま、このあたりは、
を読んでいただくとして、私が言いたいのはむしろ、
心のコントロールこそが重要
という話なのです。
それも「言葉の定義」という、ものすごくシンプルな部分ですね。そういうすごく単純なことが、人生の分岐点を左右することもあるんだってことなんです。
で、たとえば、バクチでもそうだし、アルコール中毒でもそうだし、恋愛中毒でもそうなんだけど、中毒に陥ってる人は、なんらかの「定義のあやまち」を犯してることが多いんですね。
先にあげた「アダルトチルドレン」なんかもそうなんですよ。
子供時代の自分のむりくりな自己欺瞞が、いつのまにか「心の奥底からわきあがる真実の声」に思えてくる。その衝動にさからえない気持ちになる。
まったく同じ構造ですね。タバコを好きだと思うのと。
なので、こういう偽者の衝動にだまされちゃ駄目なんですけど、これがねぇ。
なかなか。
見破れない。
私はいまだに、それで苦労してます。
で、意外とこれは「劣情」とかを無視して、ごく普通の判断を「正しい判断」と設定しておくというのが、効果的だったりするんですね。
んー、ちょっと話題がずれてきたので、今日はここまで。
ともかく、みんな、自分の自己欺瞞には注意しよう!人生台無しにしちゃうぞ。いや、マジに。