大きな失敗は小さな失敗の積み重ねである。

脳が冴える15の習慣 記憶・集中・思考力を高める (生活人新書)

脳が冴える15の習慣 記憶・集中・思考力を高める (生活人新書)

良い本である。みなさん読みましょう。おしまい。


と、それだけで済ませたいくらい、シンプルで良い本でした。著者は、脳神経外科の専門医をされている方ですが、臨床の現場から、脳の機能を高めるには、どういう生活習慣を形作っていけば良いのかを誰にでもすぐできる生活習慣の提案として、「こうすればいいよ」と具体的に書かれています。


で、その習慣が相互にからみあって、「簡単・シンプル」でありながら、効率的に脳の機能を高められるようになっているのですね。で、実際に、効果がありそうだなぁと思うのは、臨床での事例紹介とともに「習慣」の効果を説いているからでしょう。

しかも、どの習慣も無理なく始められる内容ばかりで、「よし、やってみよう!」と思わせてくれるところが、この本の良いところなのです。

タイトルにした「失敗」の話は、本のかなり後半に載っている話です。
この本は、簡単で基礎的な「習慣」の紹介から始まって、だんだん難易度の高い「習慣」紹介に進むという構成になってますから、後半は、生活習慣としては、かなり高度なものになっています。


で、失敗と言うことに対しては著者の築山さんは、「つらいけど、失敗ノートをつけよう」という事を言っておられて、そこに出てきたのが、この「大きな失敗」の話題です。
築山さんいわく、大きな失敗は多様な要素で発生しているので、本質的でない感情問題に注目しがちだが、小さな失敗は原因も特定しやすく、本質に近づきやすい、とされているのです。


実は僕は、この「大きな失敗は小さな失敗の積み重ねであり、大きな失敗を見ても解決につながらない」という考え方こそが、この本の、というか、築山さんの考えている、もっとも大きなテーマなのではないかな? と思っているのです。


「大きな失敗とは小さな失敗の集積である」というのは、なんと言うことのない話に見えて、ものすごく大きな示唆を含んでいるゾ!と僕は思うのです。


たとえば、夫婦が離婚したとして、その原因はいったい何だったのか? と聞いたときに、相手の問題に対してすごく感情的になっていて、すべてを相手のせいにしている、などと言うことがとても多かったりします。自分の経験をふりかえっても、友人の話をまとめてみても、結局はそうなります。


でも実はそれは生活の中での小さな問題がいくつも複数重なって、どう対処して良いかわからなくなって、最後に「相手のせい」にして決算してしまった、というような事がほとんどなんじゃないかなぁって思うのです。


そういうところで、相手のせいにしても、あまり前向きではないので、たとえば、「朝は寝坊しないようにする」「家事は積極的に自らやる」というような築山さん提案の「脳を活性化させる習慣」をひとつでも実行したほうが、はるかに意義は大きいと思うのですね。


脳にスイッチを入れるためには、生活の原点となる起床時間を朝早くに固定して、毎日の生活をキチンとリズムを持ったものにすべし、というのが、この本の最初に紹介されている習慣なのですが、そういう当たり前の事を整えれば、その他の事も自然に整っていく、という気がしてなりません。


この本では、その「自然に整う」という部分に関しては何も言っておられませんが、「脳が冴えるかどうか」という観点から「習慣」の善し悪しを判定して紹介されているので、とにかく「脳が冴える方向に自分を動かそう」という気持ち、行動にはなりますし、そういう気持ちや行動をしていれば、物事に対する対処の仕方も当然変ってくるはずだよなって僕は思うのです。嫁さんが機嫌の悪い時でも余裕を持って対処できるとかね。結局は、そういう生活習慣がキチンと備わってないと、自分自身に余裕がなくなって、イラついてしまうという事になると思うのです。


そういうイラつきが出てしまってから、問題を解決しようとしても、それはすでに問題が複雑化してからの「失敗」なのであって、まず生活習慣を整えるところから、やり直さないと、これはどうしたってうまく行かないんじゃないかなぁ、というのが私の最近の思いなのであります。


で、小さな習慣をなんとか身につけるっていうのは、これは目標立てて実行とかもしやすいのですよね。やればできる。
この「やればできる」って言うところが大事で。ほんとに、問題が大きくなってから対処しようとすると、どこから手をつけていいのかすらわからなくなってしまいますからね。


ということで、この本はとても素晴らしい名著だと、私は思います。みなさまぜひご一読くださいませ。