40過ぎると怒りっぽくなるそうです。

晦日になってしまいましたが、ちょっと書き込み。

最近読んだ本の中では、この本での気づきは非常に大きかったですねぇ。40代になったら、とにかく目を通しておきましょうって感じ。

「人は『感情』から老化する。」
人は「感情」から老化する―前頭葉の若さを保つ習慣術 (祥伝社新書)
和田秀樹:著 祥伝社新書

先に、この本の紹介文をアマゾンから引用しておきます。

人間の老化は、「知力」「体力」より、まず「感情」から始まる。記憶力の衰えを気にする人は多いが、知能・知性は高齢になってもさほど衰えないことがわかっているし、正常歩行能力なども思っている以上に、維持される。それよりも問題なのか、怒り出したらずっと怒っているといった、感情のコントロールや切り替えができなくなったり、自発性や意欲が減退していく「感情の老化」だ。脳の中でも、記憶を司る「海馬」などよりも、人間的な感情を司る「前頭葉」から、真っ先に縮み始めることがわかっている。これを放っておくと、体も脳も見た目も、すべてが加速度的に老化してしまう。本書の「前頭葉を若く保つ習慣術」で、感情の老化を食い止めよう。

という内容です。

で、この本も新書なんですが、最近の新書ブームは、少し行きすぎの気がしていて、「バカの壁」以来、新書を手に取る時には立ち読みである程度、内容スキャンをしてからでないと、どんな失敗をしてしまうかわからないので、けっこう慎重です。

でもまぁ、この本は内容チェックして「よし、これなら買う価値あり」と思って買った本なのであります。人生は短いし、つまらない本を読んで時間を失いたくはないものだと思うのですよ。時間が本当にもったいないと思うんですよ。速読術でも身につけたら話しはまた別ですけど。

ちょっと脱線しますが、「バカの壁」も、買う前に立ち読みで相当スキャンしたあと「買う必要なし」と判断したんですが、そうでもしないと新書の山の中、良い本にはなかなか出会えなくなってしまう。で、僕は「読む価値ないよなぁ」と思ったのに、世間的には、あの大ヒットですからねぇ。困ったものだと思います。

新書ブームに関しては、
http://www.sankei.co.jp/enak/2006/may/kiji/02booksale.html
を読んでいただくとして、まぁ正直言って「粗製濫造」のそしりは免れ得ない。そういう風潮がここ数年続いておるわけですが、この和田秀樹氏の「感情から老化する」を読むと、以下のように新書ブームが的確に評されていて、うなってしまう。

年を取ると、まず「感情」から老化が起き、見栄にとらわれたりするようになるという、さまざまな医学的な検証をした後の解説で、少し長くなりますが引用してみたい。

入門書や、やさしいレベルの本を買うのも恥ずかしい、あるいはプライドが許さない、という見栄から専門書を読む。「猿でもわかる〜」や、「猫でもわかる〜」といった入門書を買うのが恥ずかしいから、難しい本を買って、結局よくわからなかったという結果に終わる。

感情が老化してくるとより保守的になってきて、それゆえに「恥意識」が強くなるのだ。その恥意識の強さが理解の妨げになってしまう。理解力はあるはずなのに、恥じらいと見栄が邪魔しているのである。

そういう意味で昨今の新書ブームは(この本も新書判なのだが)、中高年の「知りたいけど、ちょっとカッコつけたい」という欲求を満たしていることがいちばんの理由のような気がする。

新書はかつて教養新書と呼ばれ、それを持っていることは知的レベルのある種のステータスにもなる。そういったパッケージでありながら、現在の新書は超わかりやすい入門書といったテーマのものも多く、恥をかかずに初歩から学びたいという、中高年のニーズを満たしているのだ。

という所見ですね。和田秀樹さんの見方では。

まぁ、そこまで「恥」を意識してるのではなく、単に入門書がかったるいくせに値段が高いというのが問題なのと、中高年は忙しくて、そんな「猿でもわかる」レベルからやってらんないんだよ、っていう事の方が大きいと思うんですが、僕は徹底して何事も、まず「猿からわかる〜」から入るのを良しとしてきたので、最近の新書の基礎をすっとばして雰囲気で状況を「解説」するような書籍に対しては、ものすごく眉にツバをつけまくりになってしまうのですな。

新書など、いまやソフトバンク新書に幻冬舎新書ちくま新書角川oneテーマ21新書など、わけのわからん新書のオンパレードで、各社がたがいに書店の棚取り合戦をしているのが、もう本当にうっとおしいくらいで。

こうなると、新書など、週刊誌の提灯記事や、アオリだけの扇情的な連載記事とさして違いはなくなってしまってるわけですが、その品質の劣化に悲しいかな、私などはとても気づきにくい。新書というだけで「教養書」と思ってしまうところがある。僕らくらいの中高年はやっぱり新書という形態というと、従来の岩波新書講談社現代新書中公新書のイメージで見てしまうんですなぁ。で、おそらく、そういう「気分」をこういう新書は狙ってる。でも、その「気分」自体が、感情の硬直による老化なんですね。たぶん。

実際、今の新書は、もう昔とは違うのですよ。現にこの「感情から老化する」も祥伝社新書です。なんだそりゃ。小説とかが主体の出版社じゃん。ウルフガイシリーズ、よく読みました。お世話になりました。エンタテインメントがうまいところです。でも、岩波新書みたいに「知を社会に普及させるために評価の固まった定番の書籍を廉価で提供する」てな高尚な目的・使命なんて、初めからないわけでしょう。この新書シリーズでは。そこを実感しておかないとアカンよなって思う。

実際、「定番より流行」が狙いだからこそ、「バカの壁」の大ヒットは出た。内容は薄すぎるくらい薄いけど、薄いからこそ大ヒットするって事で。だからあれは決して「知の定番」ではないわけです。そこのギャップが問題で。でも、そのギャップの根幹は「流行もの」を「定番もの」と、つい見てしまう、読み手、つまり私の側の「老化」にこそあるわけです。

最近はロングテールとかアマゾンとか出てきて、書籍でも出版社を問わずに一括検索して評価するのが普通とかになってきましたけど、こういう棚取り合戦とか、本のパッケージングの流行とか、自分の老化の度合いとか、中間状態や社会の構造を正しく捉えて判断することの方が僕は大切だと思うのですよ。


まぁ、そんなことで脱線が長くなりましたが、この本でやっぱり一番衝撃を受けたのは、


●人間の脳は前頭葉から縮みはじめる。
前頭葉は高度で人間的な感情を司る。
前頭葉の老化が表面化するのは40代の「怒りっぽさ」から。
●切り替えの練習をしないと50代60代がやばい。


というような事が書いてある序章でありました。
残りの1−5章は、和田秀樹さんの「老化対策」でありまして、どれもこれも、大変参考にはなるんですが、まぁ序章の概略をキチンと頭に入れるのが先だろうなぁ。序章は40代になったらぜひ読んでいただきたいです。

この数年、MRIとか、リアルタイムな脳の血流量の計測とかが可能になってきてさまざまな研究が実を結んで、脳科学が大きく進歩してきたわけですが、和田秀樹さんはもともと医者で、現場で多くの老人を見てきた実体験も豊富なので、本当に説得力があるのです。


面白かったというか、ショックだったのは「保続」という現象です。前頭葉が本格的に壊れると、同じことばかり繰り返して言うとかの現象が起きるわけですが、これを「保続」と言うんだそうです。で、これは感情を司る前頭葉の「切り替え機能」が低下して起こるんだそうです。

世に言う「頑固ジジイ」というのは、まさにこの「感情の切り替え」機能の低下から生じている状態で、怒ったら怒りっぱなしとかは、まさに「老化」そのものなのだと言うことなのだってことなんですね。


これはショックだった。
だって最近、というか、この数年、怒りが出てくると、どうにも止らない事が多く、自分でも悩んでたんですから。


でも、それってなんのことはない「単なる老化現象」だったんですね。


まぁホント、そこがショックでしたよ。
自分で自分の感情のコントロールができにくくなっているという自覚があっただけに、よけいショック。

これは「論理的に見る」だけをやってたら気づかないんですよね。論理的に間違った事を言ってる人を見ると「腹が立つ」とかになってたから。


いや、べつに立腹する必要なんてないんだから。ただ普通に素直に、おだやかに「それは違いますよ」と指摘すりゃぁいいだけの話しなわけです。


でも、それがしにくくなってきてる。
小さい字が読みにくくなってきてるのと同じだ!
ようは老化現象なのだ!!!


気をつけようって思いますよ。ほんとに。
気をつけなきゃダメだ。


でも、それは生理現象という部分もあるから、そう簡単でもないんでしょうけどね。
そういう事もあって、「40代の危機」とか「ミッドライフクライシス」とかが出てくるんでしょうな。
それをつくづく実感させられました。


感情の切り替え。


難しいけど、どんどんやらなきゃ。人生後半戦のためにも。そう言うことをしみじみ感じさせてくれる、これはなかなか良い本だと思います。


和田秀樹さんも同年代だしね。魂の叫びに近いものがありますな。口調は軽やかだけど、魂はせっぱ詰まってる。そんな感じ。なので、同年代にはすごく良く届く内容なんじゃないかなぁ。他の世代には全然ウケない可能性は高いのですが。


実感こもっとる。


そんな本でした。おすすめです。