あの人と和解する。


あの人と和解する ―仲直りの心理学 (集英社新書)

あの人と和解する ―仲直りの心理学 (集英社新書)

うーん。この本。すごい。まさに求めていた話だなぁ。

いや、彼女とうまくいかなくなって別れた、ということが、いまだに尾を引いている私なのですが、実はその「うまくいかなくなった」という事の理由とかプロセスとかが、いまだに全然、ちーとも、さっぱり、まったく、わからないのでありますよ。


確かに感情的に行き違いがあって、「なんでわかってくれへんねん!」という感じにはお互いになっていて、それでイライラして別れてしまったというのはあるにしても、ようは「分ってくれない=分らない」ままに別れてるわけですから、何の進展も発展も反省も、何もないわけですよ。


ね? そうでしょ?


なので、僕としては、別れてからも、とにかくスッキリしなかったんですが、この本を読んでいると、とにかくいろんな事で「あああああああ、そそそ、そうだったのか!」と思うことが、とても多い。


たとえば、「わからない」という事にしても、それを「わからない事はある」というスタンスで考えていくという立場を取っておられるのですよ、この井上孝代さんは。


「なんだかムシが好かない」という言葉があるように、そういう事はあるのだ、としている。で、そこを「なんだか」を「何故?」と自分に問いかけるようにしましょう、と言ってる訳ですね。


なぜ嫌いなのか、はっきりとしない。何が不満なのか、良く分からない。そこを「自分自身に問いかけましょう。」と言っている。


で、それこそが「仲直りのために必要なステップなのだ」と明確に断定してるところが素敵です。


わからないんですよ、人間。なんで腹が立つのかとか。よくわからないで怒ってたり、イライラしたりしてるもんなんです。ほんとに。


で、この「よくわからないけど腹が立つ」を、そのままにしておくと、理由が明確でないだけに、対処のしようがなくて、いらだちや腹立ちを適正な所にとどめ置くことができなくなって、腹立ちだけが暴走して止らなくなったりするわけです。


だから、誰かに対して腹が立ったとしたら、「その原因は自分にある」と考える事が重要なんです。腹立ちの原因は自分にあるんです。たいていは。


なので、イライラしたら、「なぜ私はイライラしているのだろうか? その原因はどこにあるのだろうか?」と問いかけたりすることが、自分の幸せをもたらしてくれるのですね。


なんでもない、当たり前のことなんですけど、実はそういう大事な事を僕たちはつい忘れがちになっていて、そのあたりの事を、実に説得力を持って語られているのが、この本なんです。


僕はもう、赤線やらなにやら引きまくりの、大影響を受けてしまいました。この本はとても素晴らしいです。


で、一冊を通して、とても深い「智慧」を得ましたが、その中でも「共感とは何か?」について書いてあるところを見て、とても深く納得したのであります。


「共感」というと、「同じように感じてあげよう」というような意味に捉えがちなんですけど、それ、できる? っていつも思うんですよね。共感することが大事だって言っても、人間そんなに簡単に共感なんてできゃしねーよ、っていつも思う。


そのあたりを、この井上孝代さんも書いていて「同じように感じるとかわかり合うとか、そんなに簡単にできない」というスタンスを取っておられて。


で、「分かり合う」という事は、「分つ」という事なのだと、言葉の定義からやり直されている。「分つ」つまり分離。違う、という事ですね。ようするに、私と相手とは違うのだ、と規定すること、そして、「違うという事を恐れない事」が大事だとしているのです。


ああ、そうだよなぁって思うのです。日本人は「他者と違う事」を恐れる国民性だものなぁって思う。


だから、自分が「嫌だなぁ」と感じている、その感じている自分も認めて、まず自分に共感して、その自分に共感した感覚で、「異なる人」である他者に共感できるようにしていこう、というスタンスを取ってるんですね。


ようするに具体的には「他者は私とは違うのだから、どう違うのだろう?」と確かめていくことが共感なのだという事なんですね。


「私が痛いと感じるのだから、あの人も痛いに違いない」


というのは人間個体の違いを前提にしていないから「共感」ではなくて「同情」だと井上さんは考えておられる。「〜のはず」で同情することは「共感」とは異なる。「どう違うのか?」を確かめながら、手探りで共感をたぐりよせるという事が「共感する」ということなのだとされていて、「ああ、まさにこれこそがコミュニケーションというものだよなぁ」と思った次第なのです。


ともあれ「和解」ってのは難しいです。
でも、だからこそ、人として成長するためにも、身につけていかなくちゃって思いますね。